それはそれは不思議な体験でした。
これまで11年間全国のマラソン大会にたくさん参加してきました。その中で考えても、先週のマラソンフェスティバルで稀有な体験をしたとはっきり言えます。
ハーフマラソンのスタート後からゴールまでほぼずっと、そうずっと見知らぬランナーと並走したという体験のお話です。
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今までのマラソン大会でもあることはある
実力が似通っているからなのか、レースを通して同じランナーと前後したり並走することは頻繁に遭遇します。
例えば、フルマラソンの調子が良い前半や、ペースが落ちてくる後半、そんな中で同じゾーンを走るランナーに出くわす機会は結構あります。
しかし今回はスタートからゴールまで、1時間半ちょっとずーっと並走です。側から見て綺麗な並走だったと自負します。
F1で言うところのサイドバイサイド、ランデブー走行でした。あっ、ちなみにコロナ禍なので2mくらい離れた並走でした。
こんな感じ(京都マラソン2020)、私ではない
すぐに私は意識した
自分と同じペースで走るランナーを見つけて付いていく、マラソンではよく採用される戦略の一つです。
個人的に、レースプランA(ベストタイム狙い)を早々と諦め、プランB(フルのレースペースより10秒位速いペース)に切り替えた辺りで、ずっと横を走る彼に気付きました。
プランAのペース時でも一緒、プランBのペース時でも一緒なのが不思議でした。終わった今になって思うのは、序盤は彼も調子良かったのでしょう。
争いは皆無
ただ走っている間、競い合っている雰囲気は全くありませんでした。それゆえに闘争心で競い合うのではなく、空気のように気にせず走りきれたのだと思います。
いつでも突き放す余裕が実はあったし、ワザと距離を取ることも出来ました。
そんなことをしなかったのは、マイペースで走っている結果がこの状態なんだと言い聞かせたことです。無理なペース上げは後半堪えますから。
マイペースと言えば、レース全体を通して他のランナーが、風除けで前後連なって走る光景はほとんど見受けられませんでした。コロナ感染予防の観点から、ソーシャルディスタンスをランナー達が保った末の現象です。
彼も例に漏れず、きちんと離れた並走でした。視界からいなくならない程度に。
ゴール後に話し掛けてみる
今は無理しない
ゴールまで残り300m辺りから彼はスパートを掛けました。
私は上述した通り、無理に上げて付いていくことは、ハナからやるつもりはありません。
今日はプランBで走り切ることが最重要と序盤に決めていたからです。今年の春先の故障以降、無理しないランニングが板に付いていたからか、スパートはかけずにゴールまでペース維持です。
故障明けの8月から4ヵ月間地道に走り、よくぞここまで回復した、ただそれだけで満足でした。
ここで無理にペースを上げ、またピキッと肉離れでも発症したら悔やんでも悔やみきれません。無理するのはもっと先、今はその時ではありません。
自分を律せられないと怪我をします。今まで何回も失敗してきた経験から悟りました。
話し掛ける
ゴール後に計測チップを外してもらってる間、一瞬彼を見失いこれまでかと思いました。でもどうしても話したくてキョロキョロ探し当て声掛けしました。
私:「1周目からずっと一緒でしたね」
(ハーフは4周)
彼:「ありがとうございます。おかげでベストタイムが出ました。引っ張ってくれたおかげです。ありがとございました。」
そう言う事だったんだと合点がいきました。ゴール後の彼の表情から、必死に21キロずっと付いてきたのです。
コロナ禍ではご法度な握手を、どうしても手が出てしまい2回も交わして別れました。
※彼は約6分ベストタイムを縮めたと言う
私の結果
私自身は早々にベストタイムは望めないと察知し、プランBでゴールまでペースを守った走りをすると決心して走り続けました。
具体的に言うと私レベルですが、キロあたり4:30秒以上を見ないペースを維持することでした。
故障が明けてからこのペースで20キロを走ったことはありません。実は今シーズン初めてのことです。
昨年の今頃はキロ4:20秒を切るペースでおおがきハーフを走り切ったので、現状把握にとても役立つレースとなりました。
1年前とくらべて足りないことはわかっています。スピード練習を控えていたので今後負荷を上げていくつもりです。
今回の体験で得た人のために・・ということ
結果的には変更したプランBで最後までしっかり走れました。走っている間は脚が持つか不安でしたが、修正した目標を達成できたことで新たな自信が湧いてきます。
そして、ペースを維持して一所懸命それを保つ、という私のプランが彼にとってペースランナー的役割を果たしていた模様です。
彼は彼なりに必死で私に付いてきたことがゴール後に発覚、走行中の表情は楽に見えたのですが、ゴール後に話し掛けた際の疲労具合から、それは私の誤認だったみたいです。
今回のハーフマラソンは、個人的には故障からの復調と現状の走力を再確認できたことに満足です。そして何より無意識ながら、誰かの走力アップに役立てたことをとても嬉しく感じたレースとなりました。
冬の昭和記念公園