マラソン仕様のレースシューズならアディダス、アシックスが数年前まで隆盛で定番のものでした。初めて買ったランニングシューズはナイキで、4、5足目に買ったものが合わなく失望、それ以来ナイキはご無沙汰でした。
しかし昨年ズームフライ・フライニットを履き衝撃を受け、私の中の固定観念は完全になくなります。そして今シーズンの勝負シューズとして進化版のズームフライ3購入の運びとなったのです。
多くのサイトでズームフライ3のレビューはされていますので、私は特に前作ズームフライ・フライニットとの比較を中心に話を進めていきたいと思います。
「あの靴のおかげで速く走れる」
それだけではなく
「あの靴のおかげで楽に速く走れる」
ズームフライフライニットとズームフライ3の比較
シリーズ第3弾「ズームフライ 3」は、アッパーやソールを含め前作からのフルモデルチェンジ版となります。
2作目「ズームフライ・フライニット」とはナイキリアクト、カーボンファイバープレート以外の共通点が容姿を含めほとんどありません。
そこで、ぱっと見わかりやすい簡易的な比較表を示します。以降箇条書きとなります。お付き合いください。
ズームフライ・フライニット | ズームフライ3 | |
1. 定価 | 17280円(税込) | 17280円(税込) |
2. 重さ(28.5cm) | 271g | 292g |
3. クッション性 | 柔らかめ | 硬め |
4. 反発性 | スゴイ | スゴイ |
5. ソールの厚み | 3より薄め | 厚い |
6. アウトソール | フラットな面にわずかなくぼみ | 大きな縦溝が足裏全体に |
7. 走行安定性 | グニャッと感 | 前進方向に高い安定感 |
8. アッパー素材 | ニットが足に密着 | Viparweaveで硬め |
9. サイズ感 | 足の形にフィット | Viparweaveでゆとり |
10. 履き心地 | ニットが足全体を包み込む | Viparweaveで余裕あり |
11. グリップ感 (雨天時) |
スリップする | スリップしない |
1. 定価は?
どちらも価格は同じ、新しくなっても値段は据え置きです。
どのみち定価では高くて手が出せない懐事情なので、ズームフライ3はネットで安くなった今が買い時だと思います。
ヴェイパーにせよ、ズームにせよ安い買い物ではありません。路面店で試し履きや、ランステでレンタル試走を経てからネット購入が今や一般的ではないでしょうか。
大体12000円以内で購入可能なのが2021年2月の相場となっております。
2. 重さは?
ズームフライ3となり、見た目も装着感も重厚感が増しました。
ズームフライ・フライニットより20g(自分サイズ比)重量増加、こんな少しの差なのに走っている最中は確かな重みを感じます。
これをデメリットとして受け止めるかは別として、28.5cmサイズを購入した私には控えめに言って重い靴です。
フライニット
271g
ズームフライ3
292g
3. クッション性について
ファーストインプレッションはズバリ、クッション硬くなったなぁ・・でした。
両方共に素材はナイキリアクトなのでクッション性の高さは十分感じられるのですが、接地感の変化が顕著で「硬い」と感じます。
何回かポイント練習で履いてみると、フライニットの方が自分には合っていたかも・・との想いが募ります。
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4. 反発性について
ズームフライはミッドソール素材「ナイキリアクト」にカーボンファイバー製のプレートが内蔵され、その圧倒的な反発力が推進力を生む仕様となっています。
もちろんそうなのですが、実はカーボンの硬さでシューズに安定感をもたらしているとの実感があります。リアクトフォームの不安定なふにゃふにゃ感をカーボンで抑えるイメージです。
カーボンプレートの反発とリアクトのクッション性で、体幹を軸に腕と脚を振り子のようにトントンと置いていくと、自然と楽にスピードに乗る事ができます。
メーカー側の緻密に計算されたバランスを体感できるのがズームフライシリーズなのです。
5. ソールの厚み
ソールの厚みにより前のめりとなり、その前傾姿勢で前に脚が勝手に運ばれていきます。
オフセット(つま先とかかとのソールの厚さの差)が前モデルのフライニット11mmから8mmへ変更され、傾斜がゆるくなったことでシューズ全体の独特なクセが少なくなりました。 これは個人的に残念と思える点です。
メーカーが好き嫌いの差が大きいシューズではなく、万人受けを狙った扱いやすいシューズに変えてきたと言えます。
また、ミッドッソールが見た目ボリューミーになり傾斜が減ったことで、アキレス腱やふくらはぎへの負担軽減に寄与しています。
確かに厚いわ・・・
6. 7. アウトソールで走行が安定
もともとリアクトのミッドソール素材は柔らかくクッション性が高いものです。
なのに接地が柔らかく感じたフライニットより、ズームフライ3は明らかに安定感が高いのはこのアウトソールの硬さが原因だと思います。
アウトソールは前作とは全く異なる形状で溝を切った仕様に大幅変更となり、直進安定性とグリップ力向上に役立っています。確かに前足部と踵部分に装着されたラバーは見るからにフライニットよりグリップ力がありそうです。
実際に走ってみるとこの南北の縦線の刻みが走行時の安定性に大きく貢献、この変更点は大いに気に入ってます。
また耐久性に関してフライニットは購入して1年、レースやポイント練習で積極的に履いた割にまだまだ使える状態です。おそらくズームフライ3はそれ以上の耐久性を備えているので練習シューズ向きとも言えるかもしれません。
しっかりとした溝あり
8. アッパーについて
フライニットはその素材上どうしても雨で濡れると重くなる弱点がありました。
2019年雨の東京マラソンでアッパー素材が水分を吸収し、シューズ全体が重い感覚がレース中ずっとありました。これで42キロ走ったらロスは如何ほどだったのでしょう?晴れていればもう3分くらい早くゴール、サブ3.15達成していたかもしれません。
しかしズームフライ3ではこれが解消されています。
アッパー素材にヴェイパーフライネクスト%と同じViparweave(ヴェイパーウェーブ)というビニール素材を使用、水分を通さない仕様でフライニットの弱点を克服しました。
実際に先日、雨の皇居でその効果を実証体験済みです。普通の降雨では濡れてる感がなく、フライニットではこうはいかない、と感じたものです。
アッパーは水分をはじく感じ
9. サイズ感はどう?
フライニットよりワンサイズダウン(0,5cm)がおすすめです。
フライニットがズームフライ3より締めつけてフィットすることを考えると、締め付けが減った分、もうワンサイズダウンで注文して丁度いいかもしれません。
私自身はフライニットと同サイズを購入して不満なく使えています。
10. 履き心地って?
個人的には伸縮性が高く、足へのホールド感(密着感)が強いフライニットの方が好みです。
フライニットはこのニット感が最大の武器で、雨さえ降らなければホント扱いやすいシューズです。ニットが足を包む強さが絶妙で、シューズを履いた時の足の自由度が高いと感じてます。
対してズームフライ3は、厚手のソックスのような生地なので優しく足を包んでくれます。シューズの踵の感触って意外と重要で、足を入れた瞬間に「いい」「わるい」が分かるものです。
このゆとり感を伴ったフィットだと速く走った時に脱げそうになって気になってしまいますが、シューズが脱げるたことはありません。
11. 雨天時のグリップ力について
ウェット状態の路面でフライニットでは、アウトソールのグリップ感が不十分なのは常に感じていました。
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また雨天時のポイント練習で滑る滑る・・
しかしズームフライ3では、フライニットで不満だったウェット路面時のグリップ力の低さが解消されています。特にアップダウンで感じた蹴り出し時のスリップ感がなくなりました。
車に例えるとトルクフルな感覚と言いましょうか、これは履いてみないとわからない感覚です。
雨でもこの溝でしっかりグリップ
結局ズームフライ3ってどうなの?
世間を騒がせた話題の「ナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%」ですが、ズームフライ3自体はその廉価版的な位置付けなのは否めません。
しかし、このシューズでゆっくり目のジョギングからポイント練習のインターバルまで試してみたところ(キロ7分〜3分40秒)、どの速度帯でも難なく走れると感じます。
あくまでも主観ですが、このシューズの触込みはエリートモデルだからキロ3分台で走らなければポテンシャルを発揮できない、とは全く感じません。
サブ3以下レベルのランナーのレース用、またはトレーニング用に適したシューズだと思っています。そのレベルの私が感じたのだからそうなんです、多分。この点ではズームフライ・フライニットも同じでした。
最後に、端的に新旧ズームフライの違いを感覚的な表現でまとめると、
ズームフライ・フライニットが軟派なら、ズームフライ3は硬派なシューズ
となります。
※発売から時間が経ち、オンラインショプで希望のサイズを見つけづらくなりました:2021年11月