レース前夜にホテルのエレベーター内で出会った方(見るからに富士登山に出場しそうな人)に、
「明日頑張って下さい」と言うと
「頑張って下さい、僕は五合目なんで」
「僕も五合目です、お互い頑張りましょう」
いいですよねこういうの、見ず知らずの者同士でも目指すところは一緒で来年の山頂コース挑戦権奪取です。
今回の記事は富士登山競走五合目コース、そこをかろうじて2時間20分以内で完走できた話です。
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富士登山競走五合目コースって?
富士登山競走を一言で説明するのなら、富士吉田市役所から富士山頂を一気に駆け上がる日本一過酷なレースです。その知名度の高さから全国から猛者達が集います。
幾多のマラソン大会に出てきましが、このレースほど自らより速そうな人(立ち振る舞いとか見た目)しかいないレースはありませんでした。
五合目コースの特徴
五合目コースは全長15kmで下りなしの上りっぱなしの類い稀、他にない唯一無二のコース設定となっています。
主なチェックポイントは浅間神社(2.8km)、中の茶屋(7.3km)、馬返し(10.8km)となり、給水所は浅間神社、中ノ茶屋、馬返し、二合五勺の4ヶ所となります。
開催される7月となればすでに暑い時期、給水所にあるものだけでは補給は足りないと思われます。
発汗で失われるミネラル分などの電解質を、中途補給しなければ山頂コースへ続く制限時間内完走は難しいと言えます。
給水所
山頂コースの出場権がかかっている
富士登山競走は山頂コースと五合目コースの2部門からなります。
そして山頂コースへ出走するためには、あらかじめ五合目コースで基準タイム(2時間20分以内)をクリアしなければなりません。
つまり五合目コースは山頂コースへの挑戦権を掛けた戦いなのです。そんな五合目コースに試走なしで初挑戦し、完膚無きまでに打ちのめされて帰ってきた私です。
高低図
公式HPより
マラソンのグランドスラム
ランナー界隈ではこのレースは、マラソングランドスラムの1つとして認知されています。
グランドスラムとは
1. フルマラソン3時間以内完走
2. ウルトラマラソン10時間以内完走
3. 富士登山競走山頂コース4時間半以内完走
誰が言い出したかわかりませんが、3つ全てを達成することで一流市民ランナーの称号を得ることができるみたいです。
富士登山競走五合目コース攻略のコツとは?
どの位のペースで走れば五合目コースを2時間20分以内でクリア出来るのか?
富士登山競走は基本的に毎年コースが同一で変わりません。よってその疑問は過去のレース結果や、ランナーブログ等から分析できます。
前半は馬返しまで後半は五合目まで
五合目コース
【前半】10Kmのロードレース
+
【後半】5Kmのトレイルレース
と理解できました。またネット情報を総括するとタイム的にはおおよそ
前半:後半
1:1
となります。
2019年以降2023年時点で五合目まで3回大会で走ったのですが、ネット情報の通りこれは正しい情報と言えます。
脚攣りや渋滞、ロードとトレイルの得意や否やはあるのですが、おおまかそこに落ち着きます。
山頂コースのBブロック以上を狙う
山頂コースのスタートブロック分けは、五合目コースの走破タイムで決まります。
Aブロック→1時間50分以内
Bブロック→2時間10分以内
Cブロック→2時間20分以内
※2019年以前までの分け方で、2023年はA〜Eブロックとなっている
そこで今回自身の目標は山頂コースBブロック奪取とし、五合目コースを2時間10分以内走破を目指しました。
なぜならBブロックからスタートするということは、山頂コース完走率が50%くらいというデータがあるからです。
そのくらいの走力がないと山頂は取れないということ、来年の自分へのプレゼントと当初は考えていました。
こちらは山頂コーススタート前
馬返しまでがとにかく肝だって
色々な方のブログや攻略法を読んでいると馬返しまでが勝負とか、馬返しまでは突っめとのことです。
馬返し以降の登山道では狭く追い抜きが難しく、バテたランナーや足攣りランナー以外はほとんど抜けません。
実際スタート前のセレモニー時、先頭のエリート選手がインタビューで馬返し以降は惰性と仰っていたのが印象的でした。
よって今回は馬返しまでは歩かない、フルマラソン並みに頑張るとの目標を立てました。
ココがポイント
スタートから馬返しまでを
1時間5分以内
馬返し以降は登山道となりまともに走れる区間はごく僅か、それ以外は早歩きでテンポよく上を目指すのみとなります。
馬返しをこのタイムで通過できれば、山頂コースBブロックがもれなく付いてくるはずです。
五合目コースを走って得た生情報
上述のように「登山道に入ってから追い抜くのは厳しい」との情報でしたが、実際に走った個人的な意見としては同じような走力だから登山道では抜きづらいと感じました。
馬返し以降は同じ走力の早歩き登山だと実感しました。
そんな中で本当に速いランナーやトレイルゾーンが得意なランナーは、狭くても無理なくどんどん追い抜いていけることも付け加えておきます。
五合目コースの試走は必要か?
これはハッキリと結論付け出来ます。
富士登山競走の試走はやれるのならやった方が断然有利
試走されているランナーがたくさんいるのは知っていましたが、機会を作れなく私自身は今回ぶっつけ本番となりました。実際走ってみて1回でも試走しておけば良かったと後悔の念です。
なぜならコースを知っていれば、脚元の路面状況をもっと早くから把握できたのではないかと思ったからです。また様々な気象条件を経験すれば、装備を試せる機会が必然的に増えるからです。
試走すればそれはコースを1回走ったことになりますから、経験として蓄積されることが富士山では大きなアドバンテージとなります。
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脚つりとシューズ選択ミスで制限時間がギリギリだった
脚つり、今シーズンもこれかよ
富士登山競走は7月下旬開催の夏のレースです。馬返しを超えてもまだ気温は高く、ようやく五合目付近になって初めて涼しいと感じます。今回みたく日差しが強いと序盤から大量発汗は避けられません。
さらに終始上りだけですから、適切な補給をしないと脱水症状、ガス欠、脚攣りリスクが益々高まります。
昨秋のマラソンでは足攣りを連発、踏ん張りどころで守りに入ってしまい、最終的にやり切った感が乏しい結果でした。
そこで今シーズンは対策として塩熱サプリを大量に持参です。給水毎とは言わず、約30分毎にカリカリと2粒口に含む作戦を立てました。
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今回のレース、最大のミスがこれ
レース前のスタート地点給水所にて塩タブレットが無料配布されていました。
係のおばちゃん「沢山持ってって〜」に便乗して一握りポケットに詰め込みパンパン、安心したのか事前に用意した塩熱サプリをポッケに入れ忘れ手荷物を預けてしまったのです。
交通規制解除とともにEブロックに並ぼうとした時に気づきました。
塩熱サプリ忘れたわ・・・
暑さやロング走のキツイ場面で今まで何度も助けてもらった塩熱サプリ、それが手元にないことで精神的に追い込まれた感さえありました。
個人的には塩熱サプリは、それを持っているだけで安心のプラシーボ効果ありと考えてます。
馬返し超えたらやっぱり脚つった
スタートセレモ二ーの時点で雲が切れて、夏の容赦ない日差しが背中に照りつけてきます。もうすでに汗が背中を伝ってランシャツが濡れ始めています。
それでも馬返しまで必死で走って頑張った結果1時間5分台での通過、ほぼ目標通りのタイムです。そして登山道に入ったのですがその瞬間から脚つりの前兆です。
ピクピク、ピクピク
昨秋は脚を攣る時はいつだってふくらはぎでした。しかし上りが永遠と続く富士登山競争では勝手が違いました。ふくらはぎではなくスネ横の筋肉が縦につったのです。
しかも時間差で両脚つった
脚攣りの再現性の高さはもう鉄板です。
塩熱サプリがあったら果たしてどうだったのか、それは来年への宿題に取っておくとして心底辟易した瞬間でした。
1時間5分台で馬返し通過したのだから、おそらくBブロック奪取はできるだろうと浮ついた途端に奈落へ落とされました。
他のランナーの邪魔にならないようコース外で立ち止まる始末です。その場で3分以上立ち往生、ようやく右脚が収まり速度を上げて挽回を狙い始めた時でした。
ピクピク、ピクピク
今度は左脚のスネ横を攣る災難再びとなりました。そこからは立ち止まっては休みの繰り返しで走行ペースはメチャクチャ、山頂コース挑戦権がどんどん遠のいていきます。
諦めはしなかったから
後半戦から他ランナーに抜かれまくりだったのですが、皆さんランパンからの汗の滴り方がハンパなかったことが印象的でした。
両脚攣った自分も例に漏れず大量発汗、多くのミネラル分と水分を失っての脚攣りだったと解釈しています。
そんな状況でも「今できることはとにかく前に進むだけ」と言い聞かせ、決して速くないペースで歩を進めました。
結果、2時間16分台で何とか山頂切符ゲットです。
しかし、このタイムじゃ山頂コースでは五合目足切りなのです。来年クリック合戦を制してもCブロックスタートとなります。そしてこのゾーンからは完走率が2割弱しかありません。
五合目コースでシューズ選択ミス
ナイキのズームフライフライニットは、富士登山競走向きではないという話です。ロードのダメージの少なさとスピードに乗れるメリットを生かし、馬返しまで頑張れるシューズとして選択しました。
鷹を括って失敗する例は過去多数、私的あるあるです。そしたら馬返し以降、とにかくガレ場で滑る滑る、硬い土の走路で滑る滑るのです。
滑らないように細心の注意はもちろん、攣らないように脚を運ぶという両立はとにかく疲労が伴う走法でした。
登山道の早歩きにレーシングシューズは向かないのではないか?と出発前に思ったのですが、大抵のランナーがレーシングシューズを選択という情報だったのでそうしました。
でも現地ではいわゆるナイキの流行りのシューズは少数派でした。
富士登山競走のお得情報
取り敢えず振り返ってみて思いついた2項目となります。
宿は寸前まで問い合わせすべし
日本一のクリック合戦を制した後、宿の確保というさらなる難題と向き合わなければなりません。宿がとにかく空いていないのです。
しかしながら会場近くのホテルであっても、必ずキャンセル待ちが出ます。長野マラソン参加時にも同じ状況でしたが、結果2年連続キャンセル待ちゲットでした。
どうしても宿の確保が出来ない場合は、少し遠くに保険の宿を確保しつつ、会場近くの宿へ大会2、3週間位前から頻繁に問い合わせするのです。
今回もネットで予約状況をチェックして空きを見つけ、1週前に川口湖畔に宿を取ることができました。
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五合目コースはランパンランシャツで十分
過去参加者の格好を写真で確認していたのですが、ほとんどのランナーは脚も腕もゲイターなしです。
私自身が暑さに敏感で真冬のフルでもすでに装着しなくなっていたので、この気温なら走っている最中(ゴール後は冷える)は無装着て正解でした。
脚の動きに影響するので加圧タイツなんかも不要で、装着していたランナーは皆無でした。
夏のラン格好
レース後の注意点は体が冷える&シャトルバスが長蛇の列
五合目(標高2,250m)の気温はスタート地点からマイナス13度と言われています。
シャトルバス乗り場まで結構歩くと聞いていたので、今回はゴール後着替えてすぐにシャトルバス乗り場に向かい下山としました。
着替えとタオルを五合目まで送ったのは正解だったのですが、山頂コースが五合目打ち切りの影響なのか、とにかくシャトルバス待ちの列が長い長い。約50分並んでようやく乗車、そしてあっという間に眠りに落ちました。
列に並んでいる間気温の低さから震えているランナーを数人見かけました。彼らは走ったまんまの格好ですから、やはり五合目には防寒具を送っておくべきです。
五合目へ送っておくべきもの
・バスタオル
・下着(上は長袖でも)
・シャカシャカ
・普段着はハーフパンツで十分
・Tシャツ
・折りたたみ傘
この全てが大会が事前配布する20Lの袋に入ります。
五合目の雲上閣が更衣室となりますが、私は手荷物をもらったら路上脇でそそくさと着替えバス乗り場へ向かいました。
いや〜また参加したい度
今回の五合目コースを終えて込み上げてきた感情それは
富士山取ったる!
正直サブ3よりも目標として実感が湧きますし、達成できるのではないかと思えてきます。(追記:2023年大会後ではその過酷さに圧倒されています)
富士登山競走他は全国どこでも達成可能ですが、富士登山競走は富士山にしかないのです。しかも一年に一回のチャレンジというプレミア付きです。
シーズンスケジュールを立てる際、この大会を優先順位のトップに据え、この大会のため試走を繰り返したり坂道対策をして全国の猛者達が挑むのが富士登山競走なのです。
よって今回の山頂コースの五合目打ち切り(2019年)にあたって、山頂を目指したランナーの落胆ぶりは想像以上のものでした。気持ちの切り替えはさぞ難しかったと思います。
そんな猛者達に混じってテッペン取れるよう、1年かけて鍛錬を積み重ねる覚悟はできました。さあ、もう来年への挑戦は各々始まっているのです。
(5段階評価)