100kmウルトラマラソン完走後のセルフケアのためスーパー銭湯へ、サウナで疲労物質を絞り出し水風呂で整えます。
冷水に浸かって目を閉じてじっとしていると、数日前の雄大な四万十がハッキリと浮かびます。水風呂は苦手な方なのですが、気付くとブルブルと震えるまで高知県は四万十の余韻に浸っていました。
8年ぶりに参加した四万十川ウルトラマラソンは、またしても貴重な体験として私を包んでくれました。
四万十川の美しさはもちろん、熱心な地元ボランティアや沿道の方々の声援が魅力的な本大会、一生のうち2度も行けて支えてくれた方々に感謝の念が絶えません。
まだ参加されていないランナーの方に、少しでもこの素晴らしい大会を伝えられれば幸いです。
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四万十川ウルトラマラソンのいろいろ
夜明け前5:30スタート
ウルトラマラソンは上の写真の通り暗闇の中スタートとなりますが、松明やキャンドル、車のライトでコースを照らして下さる運営の配慮に感謝です。これはゴール付近でも同様で、日が落ちてからのゴールとなっても心配はいりません。
至る所に垣間見えるランナーへの配慮が嬉しい大会でもあります。
アクセス
羽田空港は土曜早朝から賑わう
遠方から飛行機とバス、電車で四万十参加の場合、高知空港からは多くの方が私と同じ動線となるはずです。
それぞれの空港→高知龍馬空港→高知駅→中村駅
レンタカー利用でなければ高知龍馬空港から、空港バス (高知龍馬空港→高知駅まで900円) にて高知駅まで向かいます。
今回は東京からの飛行機の到着が若干遅れたのですが、乗客が多かったのかバスは定刻を過ぎても待っていて満席になってからの出発でした。
高知駅
高知駅からは特急あしずり号 (片道4370円) で会場がある中村駅まで乗り換えなしの直通で向かいます。大会前日土曜日は大変混んでいて、午前11:42発の特急は自由席に着席できない乗客が多数いました。
私は始発の自由席を確保するため、列車ホーム入線の20分以上前から並び着席できました。補足として席を選ぶなら、海が見える進行方向左側の窓側席を確保しましょう。
太平洋
前日受付
大会前日は無料循環バスにて会場へ
先程の特急内でウルトラ参加の女性達のこんな会話が聞こえてきました。
A:「前日受付ほんといらないわ」
B:「ほんとよね」
受付会場で頂いたもの全て郵送で事足りるものばかりですから、何回も当ブログ内で申し上げている通りランナーにとって前日受付が強制では負担以外の何者でもないということです。
駅に到着したら真っ先に宿泊先に向かい移動の疲れを癒したいのに、スーツケースを転がし雨の中循環バスを待って前日受付会場へ、そして行っても平凡なもので瞬殺終了ですからやっぱり全てのマラソン大会の前日受付はもうやめるべきです。物販はゴール会場で十分です。
この点だけは言わさせていただきました。
前日受付会場
コース特徴
ご覧の通り左回りに円を描くような100kmワンウェイコースで中村に帰ってきます。高低図から前半のキツめのアップダウンが大きなコース特徴だと一目でわかります。
10km~30kmまでの大きなアップダウン、その後四万十川沿いを進み56km付近でもうひと山、61km付近の大レストステーションで一服、後半は忍耐のランニングが必須となります。ゴール直前の99kmから追い討ちをかける上り坂となるコース形態です。
どこの給水所も笑顔の出迎え
中々会えない四万十川
これは「あの峠を越えれば四万十川に会える」といったコース演出のひとつだと思っています。最初の峠を越えるといよいよ四万十川とご対面となります。
以降ゴール付近まで御一緒となるのですが、峠を降りた30km過ぎまで冠名の四万十川には出会えないということです。
スタートしてから3時間後に出会える絶景、自分は歳を食ったけどここ四万十には8年前と同じ景色が広がっていました
四万十川
沈下橋について
洪水の際に流木によって川の流れを遮断しないように設計されている欄干が無い橋
四万十川のシーンに欠かせないのが沈下橋です。コース上では半家沈下橋 (はげちんかばし)と岩間沈下橋の2箇所渡ることになります。
ここではとにかく写真撮影で映えますからスマホは嵩張りますが、沈下橋のためだけでも持参して走る価値があると申上げます。
半家沈下橋
アップダウンについて
四万十川ウルトラマラソンに鎮座するアップダウンは主なもので大小3つあります。ただしそれ以外でも緩やかな上り下りの連続となります。
ちなみにそのアップダウンは辛くても、上り切ってしまえば同じだけ下りが待っているので頑張って歩かずに進む価値はあります。
また補足ですがレース前半は前日の雨の影響で路面全体が濡れていたことにより、アウトソールが路面を捉えることができずツルツルと滑りました。
しかしスリッピーなのが道路中央の苔によるもの、轍 (わだち) はしっかりとグリップするのでそこをトレースして進みます。
濡れた道路真ん中は滑る
20km付近
ガーミンログより
パッと見でわかるアップダウンが前半に鎮座、先ほどのコース標高図を見ても分かるように15キロ付近から斜度がキツくなり始め、約5キロで400mくらい標高を上げます 。
坂の頂上手前で20km地点を通過した後、峠からは約10kmも下りが続きます。ここでレース序盤から脚の前面に負荷が掛かってきます。でもここでは急なペースアップはせずとにかくソフトな着地を心掛けるのみです。
またスタート時が燃料タンク満タン状態で、体調もこの大会に照準を当ててきているので、スタートからこの坂でも元気良くてついついペースが速まります。
フルマラソンより遅いペースで良いという心境から、私も含め大抵のランナーは序盤からオーバーペースで走っています。
ここで無理に飛ばすと後半の大失速につながると分かっていても、暑くなる午後よりも涼しい内にできるだけ先に進む心理が働きます。
結果的に私は60kmですでに脚が終わっていたことを考慮すると、フルマラソンと同じくウルトラマラソンでもペース配分が大事だということを痛感しました。
峠の頂上、ここから長い下り
下りの最中、朝日が木々から垂れ込めて幻想的
55km付近
最初の沈下橋を渡った後の55km前後にもう一つアップダウンがあります。走ってきた距離が嵩んだ分だけ短いけど坂がキツく感じます。
ここでは60kmの部のランナーが周りに多かったのですが、100kmの部のランナーに近づいて話しかけました。
C:「もうふくらはぎがパンパン、止まったらダメになる」
そう言って二人で笑い合い、彼は私よりも速いペースで坂道を駆け上がっていきました。攣り症状が各所に出始めていたので、私も止まったら固まると思い、ここでも止まらずに登り切りました。
頂上後に見た景色
99km付近
99/100km、もうすぐゴール
そしていきなり話は最終盤となりますが、ゴール直前に立ちはだかる四万十名物最後の上り坂です。
写真は坂の登り始め99km地点、丸一日かけてここまでよく頑張りました。脚が健全なランナーなんていませんから、ほとんどのランナーが歩いて上ります。
ウルトラマラソンの残り1kmは感慨深いものがあり噛み締めて走ります。それは四万十の旅の終わりを意味します。
暑くて脚動かずに早く終わって欲しいと思ったことはもう忘れてしまいました。できるだけこの空間に留まりたい気持ちが強くなってきます。
そして100kmのゴールへ
晴れると暑い
四万十の天気予測は済ませていて、ある程度の天候準備はしていました。
朝は特に冷えて吐く息が白いのは今季初、日が登り始めても湿度が高くて途中では雨のシャワーランとなったのですが、その後カラッと晴れて日差しが直に当たり、発汗多めで暑くなり概ね予報通りの天候となりました。
日中気温が一番高くなる時間帯が快晴となり、しかも辛くなるレース中盤から終盤で日陰が少なくなることで、私と同じく疲弊したランナーが多かった模様です。
10月に入り東京でも涼しくなり、もう今年日焼けすることはないだろうと思っていたのですがバッチリ日焼けしました。
そして足攣り症状が中盤以降各所に出て悩まされましたが、それはペースを落とすことでしのぐことができました。驚いたのが肘付近の筋肉が後半何度も攣ったこと、長い人生で腕が攣ったのは初体験でした。
日差し強い長閑な風景
エイドについて
旅のオアシス (給水所) を目標に走る
給水は約3キロ毎にあってウルトラマラソンでは十分といえます。置いてある水分や給食は十分にありがたいのですが、欲を言えば地元色をもっと全面に出していただきたいと思いました。
また疲労から歩く時間が長くなって日差しが強いと喉が渇いてきます。心配ならソフトフラスクやボトルを携帯し、エイドで満水にして走ることをおすすめします。実際そういったランナーを結構見かけました。
最終のゴミ箱表示があると散らからない
61キロのエイドステーション
大休憩所に到着
61km走ってきたのですからここでしっかり休憩をとり、プチリフレッシュして終盤に繋げたいと誰もが思います。
この大エイドでやることといえばTシャツ替え、シューズ替え、怪我への対処、テーピング再補強、自分に送った食べ物で回復が上げられます。
私的なことでは足裏にできた水膨れを安全ピンで潰して違和感から解放、汗で大粒の塩まみれになった身体をウエットティッシュでリセット、さらに袋に忍ばせたカロリーメイトを頬張って (エイドの物も多めに頂いて) 10分間の休憩としました。
ウルトラマラソンの中間レストステーションで感心するのが、手前でゼッケンナンバーが後方へ伝えられ、動線を進むと待ち時間なく手荷物が用意されていることです。ここはボランティアの方の頑張りに感謝、一分でも削りたいランナーには嬉しい限りです。
番号順に並べられた手荷物
迅速な手渡しの秘訣はここにあり
ランネットの大会レポから主だったものを
大会を終えてしばらくしたらランネットの大会レポを覗くのがルーティーン、今回の大会では大きく偏った意見は見られず、概ね私と同じ意見の書き込みでした。
・早朝と夕方、暗い道を車のライトやローソクやかがり火の炎で照らしてくれ助かった
・エイドの最終表示のゴミ箱は、ゴミの散らかり抑止になっていた
・スタッフ、ボランティア、地元の方々の歓迎を肌で感じた
・エイドの食べ物に地元色がなくほぼ毎回同じラインナップ
・累積標高差が1,000m以上ありハード
・オフィシャルツアーの値段設定が高過ぎる。個人手配しようにも大手旅行代理店が押さえている
・移動応援を封じ込めたのは評価
・とにかく絶景
・エイドの順番は食べ物の後に飲み物にして欲しい。飲み物を取りに幾分戻らないといけない
・仮設トイレは足が攣るから洋式にして欲しい
・間隔が短めなエイドがありがたい
・トイレが少ない
2023.10.20現在
スタート前からテンション上がる太鼓の出迎え
宿が取れない問題
四万十川ウルトラマラソン遠征において最も困難なこと、それは100km走る気力や体力を身に付けることよりも滞在ホテル確保がとにかく困難なのです。
参加を決めた時点でまずは航空券を押さえ、次に宿となるのですが中村駅近隣ホテルは軒並み大手旅行会社に押さえられていて壊滅状態でした。
前回8年前も同様、勤め先の福利厚生リストにあった宿毛 (すくも) のホテルをかろうじて取れたのですが、今回はスタート近辺に泊まりたくてエントリー直後から中村で検索していました。
毎日じゃらんで検索していると中村駅近の「ココモ」が空いているではありませんか。しかもリーズナブルな価格のままです。
これは何かの間違いかと思いつつ、高速で入力し終えるとあっさりと宿確保に成功です。しかもココモはその後数日間部屋を確保できる状態でした。
前日は宿泊ホテル側「いちもん家」で鰻を食す
笑顔の応援が心に沁みて自分も笑顔になれる
エイドにて子供達がお出迎え
いつものマラソン大会では記録を狙っているからか、ずっと強張った表情をして走っていました。でもウルトラマラソンではガツガツしてなくゆっくりランが前提、沿道の声援に慣れた中盤以降全てに笑顔で手を振って応えました。
都市型マラソン大会にボリュームは敵いませんが自分に向けられた沿道の応援がとっても温かくて、その声援に応えなければという気持ちに自然となりました。
今までやろうとしなかっただけ、自分でもやれば笑顔で対応できるんだなぁと不思議な体験となりました。
エイドにて
観光について
はりまや橋
開催地中村への移動だけで大変な労力となる大会ですから、観光は余程時間に余裕を持ったランナーだけの特権となります。
一般的にちょっとの観光なら四万十川周辺か足摺岬、または高知市界隈が選択肢となってきます。
ウルトラマラソン100km自体が異次元の疲労を伴うため、翌日は無理な日程は立てない方が身のためです。
大会終了の当日夜から筋肉疲労が酷くてヨチヨチ歩き、当然翌日は筋肉痛が最近10年では経験ないくらいに酷く、階段はまず正常に登り降りできる体調ではありませんでした。
それなのに高知城を観光に選び、城内の階段に後悔の念が強まる結果となります。特に高知城の階段は急斜面、後ろの観光客の迷惑にならないように苦悶の表情で進みました。
ウルトラマラソン翌日のお城観光は控えめに
ちなみにコレ
いや〜また参加したい度
正直言って前日受付の段階で今回はどうなの?との思いがあり、弊ブログ記事「おすすめ大会」の順位ダウンと思ったのですが、実際に走ってみるとやっぱりここは非日常感に満ち溢れていて別格最上位ランクと改めて確信しました。
例えば1回目の来店で大絶賛したラーメン店が、再びの2回目訪問時にあれ?ってなることはよくあることです。しかしここ四万十は2回目でさらに好きになりました。
2万円の参加費に現地までの交通費、そして宿泊代諸々の総額は決して安いものではありません。それでもなお参加する価値ある大会だと改めて思います。
自然とそして自分と対話する濃密な時間は何者にも代え難い体験となりますから、フルマラソンを完走するくらいのランナーならぜひ一度100kmにチャレンジしてみるべきです。
四万十川ウルトラマラソンは記録を残す大会ではなく、そんじょそこらのマラソン大会では味わうことができない記憶を一生に刻む大会です。
ありのままの雄大な自然がそこにあって、温かい心こもった大会であるからこそ、心が満たされて帰ってこれるのです。
いや〜また参加したい度
岩間沈下橋